厳冬期 百四丈の滝 山スキー
厳冬期 百四丈の滝 山スキー
2015年2月7日 [with 大魔人さん、F名人]
00:50 一里野温泉スキー場 [553]
01:45 スキー場TOP [1030]
02:25 檜倉 [P1213]
03:30 シカリ場 [JP1549]
05:05 口長倉の巻き [1615]
06:30 奥長倉の巻き [1715]
07:45 美女坂の頭 [1968]
08:40 滝見台 [2040]
<スキー滑降>
09:10〜09:25 百四丈の滝 [1725]
<シール歩行2回目>
12:15 四塚山手前400mで敗退 [2435]
<スキー滑降>
13:15 天池下の鞍部 [2083]
<シール歩行3回目>
13:35 P2138 [P2138]
<スキー滑降>
トレースをなぞって滑る
15:20 ハライ谷エントリーポイント [1510]
15:35 ボトム [685]
16:00 一里野温泉スキー場
行動時間15:50 移動距離30.0km
F名人さん:K2ヘルベント、SCARPA
大魔人さん:K2 PON2OON、Dynafit
NOZA:K2ヘルベント、Dynafit
厳冬期の百四丈の滝を見に行きませんか」
今回、大魔人さんにお誘いいただきその機会を得ることが出来ました。
一生忘れられない山行となりました。憧れが一つ叶い、興奮が冷めません。
山ヤなら行ってみたい場所、見てみたい景色、やってみたいルートなど、憧れというものが必ずあると思います。
自分にっとって、ここはいつか必ず行ってみたいと思っていた場所が、白山の「百四丈の滝」でした。所謂、「幻の滝」と言われている滝です。
ハイシーズンや春の残雪期に、加賀禅定道の長い道のりを歩くとこの滝を見ることができますが、アップダウンが多いのでスキーでやるひとはほとんどいないでしょう。
自分の場合は、この滝壺(御釜)に降り立ち間近で見てみたい、その水しぶきを浴びてみたいと、憧れていました。
今回の最大のキーワードは「厳冬期」でしょう。加賀禅定道は勿論のこと、厳冬期に百四丈の滝を間近で見た人は果たしているのでしょうか?
記録がないだけに、今回は予想通りハードな山行となりました。
<スタート〜滝見台編>
0:50 大魔人さん、F名人さんと私の3名のパーティ、スタートです。非常に心強いメンバーです。
今回アイゼン、ピッケル、ハーネス等の下降器具などをパッキングしているためザックが重いですが、ハイペースでスキー場を登り詰めます。
F名人は、夕食を2人前食べてエネルギーを蓄えているらしく、お腹が苦しくてペースが上がらない様子。
55分でスキー場トップ。圧雪車が鋭意作業中。こんな深夜に勤務中とは露知らず、お邪魔しました。ここから加賀禅定道へ入ります。
帰りはハライ谷を滑る予定なのでルート工作はなし。体力温存、スピードアップを図りスピードラッセル。
2時間40分でハライ谷。早いです。普通ならこの辺がゴールですが、ここはまだ序章に過ぎません。
この先は加賀禅定のアップダウンを綺麗に巻いてルート工作をします。といっても、私はその能力は乏しくまだまだ勉強中なので、大魔人さんF名人さんにトレースを作ってもらいます。
大魔人さんは厳冬期の白山を加賀禅定で往復するという、神業通り越して鬼技を成功させているだけに非常に心強いです。
真夜中の恐怖のトラーバス。夜の気温の低い時間帯じゃないと、とても恐ろしくてこんなことできません。ときどき際どい斜面もありましたが、口長倉、奥長倉と完璧に巻きました。
自分はずっと後ろで見ているだけで不甲斐なかったので、 安全地帯に入ると少しでも役に立つべく前に行きました。
美女坂手前の鞍部に出ると、ようやく薄明るくなり、美女坂の急登が目に飛び込んできました。
空気はひんやり。静寂と青の世界。稜線に当たる月光が作り出すコントラスト。東の空は鮮やかなオレンジ色。ため息ものでございます。
美女坂の急登は、名人さんがガンガン先頭でラッセルしてくれました。トラバースで緊張が続き、体力・神経ともに疲れてしまった自分は、この急登でさらに体力を消耗。
美女坂頭の手前で防寒対策を施し、そこを登りあげると太陽がお出迎え。清丈ケ原の真っ白な台地がありました。素敵です。
思わず雄叫び「フォーーーーー!」 この厳冬期しか見られない景色、 最高、 幸せです。
標高2000m以上は風も強く、決して甘くはありませんでしたが、モチベーションが上がりアドレナリンがどくどく。
寒さはどうってことがないように思えましたが、実際、ゼリーが凍ってしまうほど寒かったです。
恐怖のトラバース
鞍部から美女坂
Good morning.
真っ白な大地を行く二人
雪庇はどうなっている?
大魔人さん
もっと近寄ります
振り返れば北アルプス 鮮やかなオレンジ色
スノーバー2本を支点に
OKサイン
ついに滝見台から百四丈の滝が見ることができた
厳冬期 百四丈の滝
清丈ケ原と四ツ塚山
F名人さん
<百四丈滝へ 念願が叶う編>
滝見台付近からいよいよ、滝に向かって滑降したいところです。しかし、この台地は雪庇が発達するとこなので不用意に斜面に近寄ることは危険を伴うため、できません。雪庇から落ちたら谷底で万事休す。
そこで、支点を作って大魔人さんがロープワークで慎重に雪庇の方へ近寄り、安全確認をしてくれました。もし雪庇が大きく、スキーで降りられなければ、懸垂下降する準備でした。
降りるために下降器やロープワークのやり方をレクチャーを受け、緊張でした。
大魔人さん、ゆっくりと慎重に近寄っていき、、、、OKサイン!少し近寄ってもOKということで、可能な範囲で近寄ると、百四丈の滝を目視!
早く間近で見たいワクワク感が止まりません。
少し先にスキーで滑降できるポイントを見つけたので、そこから一気に滑降することに決定しました。雪庇を下降するためにハーネスを持参してきたのですが、使う必要がなく、ラッキー。
荷物をデポして、滝に向かって滑降開始です。
面白キャラなのかなと勝手に思っていた名人さんですが、斜面を複数人で滑る場合の雪崩リスクについて教授いただきました。危機管理も万全に一人ずつ順番にかつスピーディに滑り降りました。雪質はふかふかのパウダーラン!最高!あっという間に滝の目の前まで到達しました。
特大ツララ。特大級のお釜。「厳冬期 百四丈の滝」やりました!!!スケールが凄まじいです。嬉しくて仕方ありません。大魔人さんに本当に感謝です。
水がサラサラ落ちる音は、荒々しさは感じられません。もっと優しい感じの、せせらぎという表現の方が当てはまるかもしれません。
水しぶきは、自分に当たるころには細かい氷の粒と化し、ウェアが濡れることはありません。
お釜はカチカチに氷化しており、なにか滝の、白山の、その荘厳さにようなものから、無理にそれ以上近寄よろうという気にはなりませんでした。
ところで、私は食用が旺盛であり、その水を口にしないと黙って帰れないので、どうしようと考えると、そこに超特大級のツララが。。。
特大級のツララは落ちてきたらひとたまりもありませんが、その先っちょを少し折るくらいの衝撃で落ちてくることはないだろうと、ポキ、いただきました。自然の恵みに超感謝。
笈ケ岳と大笠山も見えました
腰が引けている人
<四塚山 敗退編>
いつまでも見とれていたかったのですが、F名人さんのモチベーションがすさまじく、次は四塚山へ行くといいます。末恐ろしいです。シールを張りなおして、四塚に向かってラッセル再開です。2人前の食事をたいらげただけに、エネルギー爆発しているようでした。この辺りから大魔人さん、F名人さんに続くことができず、遅れがちになりました。
日陰の場所は、雪がサラサラすぎてシールがスリップし、まるでアリ地獄のようでした。
ようやく安全地帯に上りあげると、「ノザ、先頭どうぞ」と大魔人さん。安全地帯といっても2000m以上はそう甘くはありません。トラバースはスラフを落としながらも慎重に、相手をいたわるようにそっと進みました。
11:00 スタートして10時間。鞍部に出ると、ここからが核心でした。風は一気に勢力を増し、ときには叩きつけられるように当たってきます。完全防備していてもその風にはストレスがたまります。おまけにシールのテール部分がここで剥がれかけるというトラブルが発生。剥がれた部分は大概凍ってしまって粘着力を失っているので、テーピングでぐるぐる巻きにするか、あっためて氷を溶かして張り直すか。この状況でザックを開けてテーピングを巻くことは不可能と判断し、ブラシで氷を落としシールを吐息で温めること3分、粘着力復活です。まぁ大変な苦労です。これは事前に大魔人さんに教えてもらっていたため活かされましたが、知らなかったらどうしていたか、、、恐ろしいです。
気づけば大魔人さんははるか前方に。2400m以上は風はさらに強烈になり、足を前に出せないどころか立っているのがやっと。耐風姿勢で凌いで風が弱まった瞬間に進む、なんてこともままなりません。アイゼンを履く余裕もなく成すすべなしです。
大魔人さんが上から降りてきてなにやら叫んでいます。「リスクが大きすぎるから敗退」と言っていると思うのですが、風が強すぎて最初は何を言っているのか分かりませんが、伝わりました。「ザックも下ろせない、シールもはがせない」と。
引き返して岩陰でシールを剥がして速攻で滑降しました。足が疲れているので慎重に高度を落としていきます。しかし一向に風は弱まりません。天気は下り坂です。
不思議かな、敗退にあまり悔いは感じませんでした。滝の余韻に浸りながら、厳しい環境に耐え進むのみです。滑りが厳しいというのは辛いです。
気づけば、シールを貼っているとき以外の休憩はほとんど3分以内で、歩きっぱなしでした。
疲労もたまってきて、天池へシール登り返しはかなり応えました。視界はクリアのはずですが、雪煙で前が見えないのです。
疲労と悪条件で心身ともに参っているときにトラブルは発生するのです。シールのフックが外れました。どうしてなのか理由は分かりません。フックをかけ直している間、雪煙に巻かれ顔が凍るかと思いました。よし!気を取り直して歩き出すと、TLTが回転してヒールがロック。「あーもう!!コノヤロウ!」本日10回目くらいかな、TLTさんお願いだからしばらく回らないでください。
天池に上りあげると、ようやく最後の滑降、もうシールは貼りません。デポした荷物を回収し、トレースをなぞってスピーディーに高度を落としていきました。2000m以下は風も収まり、やっと落ち着けました。ルート工作したトラバースラインをスピーディに進み、シカリ場JPの下にでました。
OKAMAとNOZA
トレースは風ですぐになくなります
四塚へ行こうとする人
凄まじいオーラ
孤高の人
う〜〜〜ん
逃げろ〜〜!!
美女坂
地獄ゴーグル作動
<ハライ谷滑降編>
最後の締めは、ハライ谷滑降です。一度左股は滑降したことがあったけれど、今回は右股を滑ります。
「ここならどこでもすべれるよ!ノザ!」ファーストトラックを譲ってくれた大魔人さん、時には厳しく時には優しく。目頭が熱くなったのはサングラスで隠しました。
レッツゴーー!!日陰の斜面は本日一番の雪質で、上部は完全なるバージンスノーでした。
これだけ雪質がいいと足の負担も少なくて、足が死んでいる自分でも、ホー!ホー!と奇声を上げながらの楽しい滑りでした。大魔人さん、F名人の滑りに見とれながら写真撮りまくり。
あっという間にボトムでした。大魔人さんが高度を落とさず滑降ラインを導いてくれたおかげで、林道にすんなり合流、あとは林道を一気に滑り降りるだけ。
林道は歩行モードでスケーティングすますが、ここでTLTさんの嫌がらせが再発。ロック!気分は全くロックじゃないよ。もう勘弁してください。
この際スキーモードで林道も行きます!これが意外と正解で、林道のデブリはスキーモードの方が進みやすく、途中から除雪されておりそこに残されたわずかな雪の上を滑るのにコントロールしやすかったです。
何はともあれ、無事に帰還。厳しかった山行の中に沢山のドラマが凝縮され、最高の思い出になりました。
大魔人さんの経験・技術、F名人さんの強烈なバイタリティ。一人では絶対にできない山行でした。本当にありがとうございました。