厳冬期最後のチャンスに白山に挑戦しました。


 今回のパートナーを紹介します。TAGAMIさんこと「まっさん」は、残雪期にナナコバ・宮谷経由で白山周回をしていて、白山に魅了されてる一人です。残雪期の槍ヶ岳で膝の靭帯を切ってもでド根性で降りて来る。MH.TRCのメンバーの一人でもありここで知り合いました。

厳冬期白山が憧れだと聞いていました。装備を万全に整えたので、コラボしませんかとのお誘い。

 ここ最近は育児や仕事で体力低下中とのことで、しかし厳冬期白山はそんなに簡単ではないのは十分しっているから、挑戦していいのかという葛藤の中、強い熱意が勝り、この晴れ間に挑戦する運びになりました。

 私も、積雪量が半端じゃない聞いているだけに、その景色を目で見たくて気合入りまくりでした。



前日、今回もなぜか飲み会の日程が重なってしまい、仕方なくノンアルで済ませる。ジムで風呂だけ入って、急いで白峰へ。時計は23時、寝る時間がない。

歯を磨きながら、JETBOILでテルモスのお茶を沸かしました。30分だけ仮眠しよう。

外を見ると雪が舞っている。

まっさんは既に準備万端の様子。ビーコン、GPSなど装備は完璧、モンチュラのウェアがカッコいいです。

では行きますか。よろしくお願いします。


林道はいきなりブーツラッセルから始まりました。至る所で片側斜面になっておりビックリ、スノーシェッドのデブリも激しかったのですが辛うじて入口があったので安心。

百万貫を過ぎると、背後に気配がない。まっさん....?

足の負担が大きいらしい。ラッセルは任せてください。まだまだ先は長いので体力温存してください。

別当出合前では、林道か山かその境界が怪しいくらいの積雪。激しいラッセルでした。

小屋の入り口は屋根の下1mが空いている程度。入ろうものなら、落ちそうです。


小雪も降り止み、雲も抜けてきました。マイナス8度でしたが風はなかったので体感温度はそれほど寒くはありませんでした。

吊り橋を渡って小休止。


エネルギーについて。今回は「柿の種」を導入。エネルギー的にはイイのかもしれないけれど、個人的にはあまりおいしいとは思わない。お茶と合うけど、冬山では却下とします。

ドリンクは、テルモスの他、炭酸飲料は手放せません。今回は、マイブームのデカビタと、定番コカコーラをパッキング。つまりお茶500ml、炭酸1,000ml。

ゼリーは8個、薄皮シリーズのパン2個。カロリーメイト、板チョコ、羊羹。それとロースハム。十分。


余談はここまでにして、ここからは物凄い積雪量の白山をご覧ください。

別当出合。小屋の手前までデブリあり。

中に入ってみたけれど、抜け出すのにかなり苦労しました。

鳥居はギリギリ確認できました。

吊り橋に降りるまでに2mほどの壁を降りる必要がありビビったけれど、幸いにも部材の上はそれほどでもなく安堵しました。

バームクーヘン。食べたい。そうではありません。中飯場小屋でした。

チブリ小屋も見えました。

やわらか〜〜い。こんな景色見たことありません。

夫婦寄り添っている

中央がエコーラインへ行くトラバースライン。勾配は緩くなっていました。

甚之助小屋は屋根のてっぺんだけ。新しい小屋に立て替えて以来、積雪量はマックスでしょうか。

このときは、風が強く目が開けられないほど。弥陀ヶ原は地獄だろうか、と内心不安。

トラバースは気が抜けない。

やっとラッセルから解放されたが今度は氷化。甘くはない。

青空が気持ちよい。

モンスターと、、、

ヘンタイ!

(凍傷になるかと思って、口以外の肌は出せなかったのです。)

ここを登れば、、、、

御前峰とご対面でございます。こんにちは(明けましておめでとうございます)。

また来ました(今年もよろしくお願いします)。

弥陀ヶ原。実に素晴らしい。

まっさんガンバ☆

室堂は半分雪に埋もれている。宿泊棟は屋根しかありません。


ここでタイムリミット。下山予定時間から逆算すると、仕方なくここで引き返すしかありません。残念。

そして沈黙。どうします?


「おれの体力じゃ、あと1時間かかるけど、山頂に行きたい。」

とまっさんが呟く。

よっぽど日ごろの行いがいいのか、風は収まって好条件になっている。

だがしかし... 是非ピークには行きたいけれど、絶対に仲間と無事に帰らないといけない。無理は禁物。


「帰りはダッシュしないと確実に日が暮れるけど、大丈夫ですか」

期待を込めて聞く。

「ノザには迷惑かけるけど、大丈夫、絶対に帰れる」


途端に目がギラ付いてきました。それでは行くしかないでしょう。

まっさんガンバ☆

Docomoの電波が通じるので、チームの仲間にLineで写真を送信。

家族にも少し遅れる旨を伝えることができた。

今日もありがとうございます。

一足早くピークに着いたので、写真撮影開始。

最後までシールで登り上げました。

厳冬期白山 ピーク☆

13時間の末ようやくピークに立ちました。言葉にならないとはこのことですか。山頂で固く握手を交わしました。

やってよかった。

「ありがとうございます。帰り道も無事に帰りますので、よろしくお願いします。」と祈って、滑降開始。

山スキーーーーーがお好きでしょ♪

(この瞬間がたまらない)

もう少し滑りましょう♪

(滑っている時間は少ししかない)

冗談はさておき、足は残っていないので、アイスバーンは慎重に滑ります。落ちたら止まらない。まっさん、経験豊富なだけあり、安定した滑り。

あっという間に室堂を横目に、弥陀ヶ原を通過。

観光新道下の大斜面へ進みパウダーをいただきます。フッカフカ~!

スーパーファット最高です。これが最後のパウダーかな。

今日のドラマの主人公のまっさん。


雪質からトラバースにもある程度傾斜が必要となり、大崩れは少し上の方からトラバースで問題なし。

林道に合流すれば、あとはスケーティングで帰還するのみ。

しかしここから先がキツイのです。ウェアを脱いで、歩行モードにしてクロスカントリー風に小走りでGo!

スノーシューの後続がいたようで、トレースがぼこぼこ。これも試練。我に七難八苦を与えたまえ!(正直、勘弁してください。)

「このさきも遅れるから、ノザ、先に行ってくれる?」

申し訳なさそうに、まっさん。お互い気を使うのも申し訳ないので、先に行くことにしました。マイペースの方が精神的に安定して進める。

ヘッドライトもある、最悪携帯もつながる、なにより信頼しているので、大丈夫。まっさんファイト!

ガンガン飛ばして進めど先は見えない。イライラするがそれでも2時間半ノンストップ。暗くなる前になんとか帰還。ヘトヘト。

やがて日が暮れ、暗くなりました。

みさごさんから、大丈夫か?とメッセージが入っていました。「田上さんは絶対に帰ってくる。ライトをつけて励ましてあげて。」と。隊長、了解です。


そして、、、来たー!

まっさん、ゴーール!


「ノザありがとう。やっぱり俺は甘かった。」

その第一声に目が潤む。

止まったらもう心が折れて歩けなくなるから、ひたすら歩き続けたそうです。アツい。男の感動です。

こちらこそ、 ありがとうございました。


18時間に及ぶこのドラマは、濃いウィスキーを飲んだときのように、熱く、そしてフラフラになりました。