鹿島槍(敗退)
鹿島槍(敗退)
G.Wの大型連休を利用して遠征を計画。 Yasuhiro先生は北海道に行ってしまったので、大魔人さんと鹿島槍に挑戦することにした。西沢から詰めて、鹿島槍北峰を目指し、北股本谷を滑降する計画だった。
大魔人さんの車に乗せて頂き、大冷橋に到着するも雪が降っていておまけに積雪も若干あり。いきなり天候に阻まれた。気合いを入れてスタートするが、林道を違う方向に進んでいたらしい、20分ロスしてしまった。改めてスタートするも、雪の温度が高く大魔人さんのシールが強烈な下駄になっている。自分は撥水を掛けてきたので下駄にならず助かったが、まだまだ先は長い。林道を進むにつれ雪は増え、西沢では激ラッセルを強いられた。深い所は膝上で、体力は奪われる。
この時期にこの降雪はヤバイ。雪崩に注意しながらも高度を上げていった。
2000m付近で、赤岩尾根に登り上げようと高度を上げた。天気は一向に回復する兆しは無い。斜度は増し樹林帯をジグをきって少しずつ高度を上げていく。しかし、一歩踏み出すとクラックが走る場面も出てきた。敗色濃厚だ。「もう危ないし帰ろうか?」と大魔人さんが言う。しばらく考えるが、あと50mも登れば尾根の上だからもう少し頑張りたいという欲がでて進んでしまった。
樹林帯をラッセルして道を切り開いていく。自分は極力振動を与えない様に慎重にトレースをなぞる。と、そのとき、クラックが辺り一面に走った。
ヤバイ、雪崩だ。
ピックストックを思い切り突き刺すが、50cmの積雪の上では刺さらない。面で落ちていく自分が分かった。流されるにつれ落下速度は増していき、なす術は無い。頭が下になっても体勢は替えられない。何かにぶつかったときの衝撃や埋まったときに備えて腕で頭を覆うことで精一杯だった。どれだけ流されただろうか、少しだけ速度が緩んだ瞬間に体勢を上向きから下向きに整えることができた。運良くピックストックは握りしめている。渾身の力でピックを突き立て、這って全身でスピードを殺して止まった。意識は明瞭どこもケガはないようだ。自分は木も何も無い斜面で止まったようだ。スキーも外れたが、リーシュでつながっている。ここはまだ危ない、安全地帯までダッシュで移動した。
自分は大丈夫だ、大魔人さんは???名前を叫ぶ。しばらく応答は無い。やばい!ビーコンを受信モードに切り替える。すると、上の方から大魔人さんの応答があった。その返事から流されておらず無事であることが分かった。
それを確認したら少し気持ちが落ち着いた。心臓がバクバクなっている。驚いたせいか身体の震えがとまらない。気づけばウェアの中に雪がかなり入ったようだ。
それにしても不幸中の幸いだ。
生きていてよかった。
大魔人さんもビーコンで捜索してくれていて、無事遭難者(私)を発見し、合流できた。大魔人さんは樹木に捕まり難を逃れることができたらしい。
自分は170mほど流されたらしいことが分かった。その雪崩は本流まで達し500mくらいデブリになっていた。下まで流されていたら命は無かっただろう。ケガをしなかったのは幸いで、万が一を考えれば本当にパートナーがいて良かったと思った。
それにしてもこの山行には深く反省した。雪崩のリスクがあれば、それ以上進んではならない。ましてや一度は敗退しようという考えがあったのに、判断を間違えたのが最大のネックだろう。そもそも鹿島槍は時期的にまだ早かったのだろうか、考えが浅はかだった。
さっさと下山し、温泉で身体を温めた。ニュースで白馬大雪渓で遭難者がでたという報道があった。紙一重だった。
こういう失敗談は自分の経験の無さ、認識の甘さ、判断の悪さであり、正直恥ずべきことであると思っている。それでも雪崩に流されて生還した記録として、また、教訓としてあえて記録に残した。
2013年4月27日[大魔人さん、Noza.:山スキー]